キラリと光る町
本山町

高知県長岡郡本山町

本山町の所在地

四国山地の中央、吉野川の源流域に位置する人口4,000人弱のまち、本山町。のどかな風景が広がりますが、高知市からは1時間弱、四国のほかの三県の中心都市にもそれぞれ車で2時間以内で行くことのできるロケーションです。南国土佐にあって冬は雪景色が見られる土地。美しい棚田からは、日本一に選ばれたこともある地域自慢のブランド米「天空の郷」が収穫されます。本山町を含む近隣4町村を嶺北(れいほく)と呼び、一体となって地域おこしを行っているのも特徴的です。
キラリと光るまち第6回は、本山町の今西芳彦町長にお話をお聞きしました。

本山町公式サイト

嶺北地域、一体となって

今西町長

—嶺北(れいほく)の地域単位での打ち出しが印象的ですが、だいぶ浸透してきたのではないですか。

今西町長:昔から近隣と一体感のある地域でしたからね。それに、このあたりでは、れいほく田舎暮らしネットワークが精力的に活動してくれているので、その影響が大きいです。

—れいほく田舎暮らしネットワークさんは、この地域にたくさんの移住者を呼び込んでいますね。

今西町長:ここのところ年に30組以上ですから、すごいですよ。れいほく田舎暮らしネットワーク自体、IターンやUターンの人を中心とする組織ですから、これから移住を考える人にとって相談しやすいのでしょう。田舎暮らしは、ぼんやりとしたイメージだけで踏み出すと大変な面も多い。先輩としてアドバイスできる彼らの存在は大きいです。私たちにとっても、非常にありがたいですね。

—れいほく田舎暮らしネットワークさんの貢献があって移住者は増えているのでしょうが、やはり外から来て住みやすいと思えるから定着するのでしょうね。

今西町長:ここは地理的に他県も近いでしょう。だから、香川県にしても愛媛県にしても、昔から交流が盛んだったんです。林業で栄えた頃は特に、地域外との往来が活発でしたしね。ですから、外からの人に対しての抵抗が少ないんですよ。

汗見川

碧く澄んだ汗見川。夏には、入らずとも眺めているだけで涼を感じられそう。

地域づくりは人づくり

—本山町は、地域おこし協力隊の受け入れにも、ずいぶん積極的だとお聞きしました。

今西町長:平成22年度から10人受け入れています。

—総務省の資料を見ると平成22年度の隊員数は全国で257名です。そこから見ても、10人は多いですね!

今西町長:はい、珍しかったはずですよ。その年の10名のうち、6名が定住してくれまして。以来、継続しています。

—地域おこし協力隊を経て本山町に定住された皆さんは、現在どんなことをされているのでしょう。

今西町長:さまざまですね。農業をしながら市民農園の管理をしている方、林業関係の仕事をされている方、カフェを開店された方もいます。

—そうですか。そうした事例が増えてくるとなおさら、外から入ってきやすくなりますものね。

今西町長:あとに続きやすくなるという意味でも、若い人がひとりでもふたりでも定住してくれると心強いですね。受け入れる側にも力をつけたいんですよ。新しく入ってきてくれた人たちを地域の貴重な人材としてどう活かせるか、受け入れる側にとっても挑戦になるでしょう。挑戦は成長につながる。それも狙いです。地域づくりは人づくりですから。

—受け入れる側にも力を。確かに、それこそが“活性化”ですものね。

※高齢過疎化の進む地方に、地方の持つ魅力やそこでのライフスタイルに感心の高い都市住民を年単位で受け入れ、地域のさまざまな活動に従事し、体験しながらの定着をはかる。平成21年に総務省により制度化された取り組み。

大石展望台

当ページ下、「じまんの人」でご紹介している中井勇介さんお手製の展望台。棚田の景色が一望できる。

若者に魅力的なまちをつくる

今西町長:そうですね。今後は移住者の方に町議等にも立候補してもらって、是非、町政にも新しい風を入れてもらいたいと思っています。

—そうなると若い人にとっても、ますます魅力的な町になりそうですね。

今西町長:若い人が減っているのは、全国共通の悩みですよね。本山町はずっと教育にも力を入れてきて、中高一貫の学校もあります。先人が誇り高い町づくりをしてきてくれたお陰です。その財産を受け継いだ私たちとしては、やる気のある若者をきちんと活かせる環境を整えなくてはなりません。高齢者が増えて、高齢者への政策に目がいきがちになりますが、町の未来のために、もっと若者のことも考えなくてはいけない。若者のための雇用の場をつくることが欠かせませんね。

—具体的には?

今西町長:観光と、それから、やはり農業や林業の六次産業化を進めたいです。素材の掘り起こしを進めていて、これまでだと、地元の棚田米「天空の郷」のブランド化はひとつの成功例です。これを使用した玄米焼酎も販売をはじめているので、楽しみにしているところです。この玄米焼酎を手がける地元企業、ばうむ合同会社は、地元の間伐材を使った雑貨製品なども製造しており好評です。

今西町長

先人がしてきてくれた「誇り高い町づくり」を継承してゆきたいと語る今西町長。

地元は、地元の人間に愛されてこそ

—ばうむさんの、嶺北杉を材料にしたmoku-laceのシリーズは、従来の間伐材加工品にはない繊細なデザインが新鮮です。「天空の郷」は、日本一のお米にも選ばれて、知名度は全国区なのではないですか。

今西町長:そうですね、お陰さまで徐々に知名度は高まっています。ただ、もちろん全国にファンは増やしたいですが、こうした特産品も、観光用にとどめては生き残れないと思うのです。やはり地産地消。地元の自分たちが、愛していかないと。

—地元に愛されているもののほうが、外の人にとっても魅力的ですしね。

今西町長:そうそう。結局、地域も同じことなんですよ。ですから、話を戻しますけれど、地元の若者に愛される町であることが大事。不思議と、高校を卒業するくらいまでここで過ごした人たちのほうが、地元への愛着が強く、その先一度町を出ても、戻りたがる傾向があるんです。本山町では最近、高校生が地域の人と連携して、地元の特産品の開発を試みるなどの取り組みも行われています。そのような取り組みを通じて地元への愛着を育てながら、彼ら彼女らが戻って来たときにも、生活が成り立つ町にしていくことに力を注いでいきたいです。

moku-lace

嶺北杉でできたmoku-laceシリーズのコースター。レースのパターンが微妙に異なる数種類が用意されている。

棚田と「天空の郷」玄米焼酎

棚田でできる良質な米が原料の「天空の郷」玄米焼酎。この景色を見ると、「天空の郷」の名にうなずける。

本山町のじまんの人 中井勇介さん クラインガルテンもとやま 管理人
中井勇介さん クラインガルテンもとやま

昭和60年生まれ。三重県出身。大学で建築を学ぶ中で、ソフト面でも町づくりの視点を持つように。本山町では、地域おこし協力隊を経て、宿泊施設付き農園「クラインガルテンもとやま」の管理人になる。町づくりに関わるさまざまなプロジェクトに関わり、複数のNPOの理事も務めている。

地域おこし協力隊として3年間、その後は、クラインガルテンもとやまの管理人をする傍ら、いろいろな角度から町づくりを考えたり、活動したりしています。僕の場合は、本山町という場所ありきではなく、町づくりありきで、中山間地域の課題を抱える土地で自分の力をつけたくて、縁あってここに来ました。大学からいた大阪では、プレイヤーのポジションでしたが、田舎に来るとプランナーとしての力も同時に求められます。多様なスキルを身につけて、日本の田舎を最先端にする一翼を担いたい。都会は都会で好きなので、価値観の境界に立って橋渡しできる存在になりたいですね。本山で気に入っていることはいくつかありますが、軽トラですれ違うとき、誰でも「おっ」と手をあげて挨拶する、あれがすごく好きです。人づき合いというほどでもない、ちょっとしたコミュニケーション、大事だと思います。

編集後記

海にも相当面している高知県ですが、森林率は日本一。その森林に育まれた清流。有名な四万十川のみならず、とにかく川がきれい。吉野川に汗見川、本山町にも、びっくりするほどきれいな川が流れています。川遊びを夏の思い出にして育つ子どもたちが、心底うらやましいです。暑い日も、川に入ると一気に涼しくなるそう。鮎も山女も「ふつうに」釣れるとか。負けず劣らずきれいなのが、棚田の景色。春には桜もずいぶんきれい。本山町は、日本のふるさとの光景を残しながらも、おしゃれなカフェもあったりする、恐るべき田舎です。高知龍馬空港からレンタカーを借りればひょいと行ける。こういうところを知ると、「ハワイもいいけど国内行こうよ」と、HISでOLさんの袖を引きたくなってしまいます。嶺北は本山町、土佐町、大豊町、大川村の4町村。それぞれに個性があり、町をまたぐと飲まれているお酒も違うなんて話も。この地域を深掘りする旅もおススメです。(2014年4月取材)

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